創造力と思いやりその3(悪魔の手術ロボトミーその功罪2)

さて、1949年、人の脳みその一部を削り落として精神疾患を患う患者さんを治療するといった外科手術、「ロボトミー手術」の発案者アントニオ・エガス・モニス。彼はこの年のノーベル医学賞を受賞します。

時代背景として多くの人が先の第二次世界大戦で心身ともにの極限状態を強いられ、精神を病んでしまったという事実もありました。
精神疾患を訴える患者さんは戦前から倍増して、その患者さんたちの家族や周囲を巻き込んでの悲惨な状況やあるいは事件事故などが大きな社会問題となっていました。

『「手に負えなかった事柄」に「決定的な解決策」が投じられた!』まさにそんな風潮で世に受け止められた結果のノーベル賞の受賞だったのでしょうか。

正常な理性を失い暴走する暴れ馬のごとく傍若無人に振る舞う者があったとしたら、その体の自由を奪うしか対処のしようはなかった。
あるいは常に恐怖や不安、不信にさいなまれ一時も目の離せない、何をしでかすかわからない状態にあるにもかかわらず、一切の聞く耳を持たない状態の者。
当事者のみならず、その周囲の者達もまともな社会生活は送れなくなって、経済的にも精神的にも追い詰められて行くのは火を見るよりも明らかです。

もともとある機能を働かせるはずである器官、しかもその仕組みが全て解明されているとは必ずしも言えない、百人百様のデリケートな心をも司る脳の一部を削り落として、人格を制御しようといった行為は、誰もがタブーと案ずるはずです。

実際のところこの手術を受けた患者さん達のほとんどの方が大きく創造性を損ない、無気力、無関心、無感動となり、全くの別人格となってしまったことが後の追跡調査で報告されています。

また当然ながら、脳に施術するのですから手術代も高額で、失敗というリスクも大いに考慮しなくてはいけません。

あの「ケネディ家の呪い」のエピソードの一つとして「大統領の隠された妹」というものがあります。「悪魔の手術」の汚名を着せられることになるこのロボトミー手術の最も象徴的な失敗例がローズ・マリー・ケネディの事例です。

ケネディ家の長女として生まれた彼女はその粗暴なふるまいが兄の政治活動の妨げになるとした理由から23歳の時にこの処置を受けさせられます。
その結果彼女の知能レベルは3歳程度のものとなり、日がな壁をボーッと眺めて過ごしたり、支離滅裂な言葉を発したりなどなど、失禁の後遺症まであったと伝えられています。86歳でこの世を去るまでの60年以上の年月をどんな思いで過ごしたのでしょうか。

高額な治療費、人格の著しい変貌、失敗による廃人化、そんなことを天秤にかけるほどのまさに「究極の選択」であったロボトミー手術。そこには患者さん達の尊厳といった面はどうにも二の次のように扱われているとしか思えないほどの切羽詰まった周囲の人たちの思惑が見え隠れしています。

「悪魔の手術」と呼ばれる所以はこの辺りに起因しているのでしょう。

日本においては以前は文筆活動をしていたが「手術のせいで大きく創造性を失い感受性の鈍化や意欲減退などでまともな記事を書けなくなってしまった。」と執刀医に恨みを感じ、その妻と母親を殺害してしまうと言った悲惨な事件も起きています。

一応、患者の人格変化などの人権侵害や有効性の疑義などから、1975年に日本精神神経学会は「精神外科を否定する決議」を可決していましたがこの事件は1979年に起きており、なんと今でもなぜか悪魔の手術ロボトミーは保険適用の治療法として認可され続けています。

が、しかし「悪魔の手術」と呼ばれるほどの過去の遺物としての位置付けは変わらぬはずです。

やはり人の心を第三者が物理的な処置によって制御しようとする試みはタブーなのではないかと私は思ってしまいます。

でも人はこの一線を越えてしまいました。

奇しくもこのロボトミーの発案者がノーベル科学賞を受賞したその年にフランスの製薬会社がクロルプロマジンなる薬を開発します。この薬は、脳のドーパミン受容体の回路を遮断する薬です。ドーパミンというのはご存知の通り、神経細胞から放出される神経伝達物質で、神経細胞から別の神経細胞へと情報を伝達する役目を果たしています。とりわけ「位置について、よーい!」みたいな状況を促すための興奮物質です。この「よーい」「よーい」「よーい」・・・が大量に襲いかかってくると脳がパニック状態になり不安や恐怖、強迫観念を引き起こし、幻聴、幻覚、様々な妄想を描きはじまます。この薬は脳細胞のドーパミン受容体に作用し、ドーパミンを遮断してしまうので、脳細胞の活動が鎮静化されます。ちょっと乱暴な言い方かもしれませんが、「削り落とす」代わりに「埋め潰す」ような印象を感じてしまいます。

いずれにしても究極の選択であったはずの今では「悪魔の手術」とまで呼ばれる脳への外科手術がなんとも手軽に「薬」という形態に変化して誰でも処方箋さえあれば容易に扱えるようになってしまったわけです。

現在の向精神薬も最初の開発から80年たった今でもこの受容体に作用するといった基本的な仕組みにおいては大きな変革はありません。

当然安全性などは研究されて進歩しているには違いないと信じたいのですが、神経伝達物質はドーパミン、セロトニンなど有名なもの意外にわかっているだけで60種以上もある上、そもそもの人が持って生まれてきた機能を抑制することでの対処療法をずーっと続けることへの臨床も取れてないと言えるはずです。

うつ病、不安神経症、気分障害、人格障害といったものはすべて薬で対処するのが常識となった現代、そもそもの一線を踏み越えてしまったことへの是非をも自身に問いかけながら慎重に対処して行かなくてはと強く案じます。

あの遺伝子組換え、ベトナムで50万人もの奇形児を産む原因となった枯れ葉剤(除草剤)で悪名高い「モ○サント社」を
これといった大義も表明することもなく、ビジネスライクに軽々と天文学的な金額で買収してしまう製薬会社「バ○エル」。

「いったい何を企んでいるんだ!」と陰謀論的な興味を語る以前の問題として「製薬会社ってなんとも儲かるんだなー」って素朴に思ってしまいます。

できることならば身体は日々の生活習慣と食べ物で、心は心で癒していくのが最良かとも。

「薬を買うお金で果物を好きなだけ!その方が身体によくない?」なんて思っています。
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